あなたは動物園がお好きですか?
たいていの人は動物園が好きでしょう。(もちろん僕もです)
日本では見られないライオンやトラといった猛獣が近くで見られるんですから。
でも、そう言っていられるのも「檻があるから」ですよね。
動物園の猛獣は檻の中にいて、危害を加えられることなんかないという安心感があればこそ、動物園は楽しいのです。
しかし、過去には猛獣が動物園から脱走した事件もあります。
当然、町はパニック。
突然、猛獣と人間が「見世物と見物人」から「捕食者と獲物」の構図になるんですよ。
今回は「上野動物園クロヒョウ脱走事件」「神野寺トラ脱走事件」「オハイオ州猛獣脱走事件」を紹介します。
三大脱走事件と言いながら僕が勝手に拾った3つなんですが、どれも考えさせられる事件ですよ。
上野動物園クロヒョウ脱走事件
1936年(昭和11年)の帝都・東京はパニックの連続でした。
2月には陸軍将校1500人ほどがクーデターを起こした二・二六事件。
5月には毒婦・阿部定が猟奇的な殺人事件を起こし、事件後数日間も東京に潜伏していました。
どちらも歴史的な事件で、当時大騒動だったことが記録に残っています。
映画などになっているので有名ですね。
そして7月25日、上野動物園から一頭のメスのクロヒョウが脱走する事件が起こります。
この3つが「昭和11年三大事件」といわれます
クロヒョウは6歳で、体長1.4m、体重52kg。
朝の5時に巡回した飼育員がクロヒョウがいないことに気づき、動物園では100人もの職員で捜索するも見つからず、警察官と憲兵に協力を依頼。
上野公園への立ち入りが禁止され、猟友会やら消防団までが駆り出され、その総数なんと700人!
戊辰戦争の激戦となった上野戦争に匹敵する大騒動だったそうです。
ちょっとクロヒョウ一頭に大袈裟な気もしますが……。
まあ、国内クーデターと、男のナニをナニした阿部定騒動の後だと思えば、人心も定まらずというところだったのかもしれません。
意外にも早期解決
事実、このニュースは都内全域に速報され、人々はクロヒョウの恐怖で雨戸を締めきり、家の中でガクブルしていたと記録されています。
この事件、大騒ぎしたわりには早期解決します。
同日の午後2時35分、現在の東京都美術館の近くの暗渠に潜むクロヒョウを発見。
闇夜のカラスじゃなく、暗渠のクロヒョウですから、光る目しか見えない。
そこで片側の出口に檻を設置し、もう片方から板の盾を押してゆき、さらに煙で燻してクロヒョウを檻に追い詰めるという「トコロテン作戦」を決行。
これが上手くいって、午後5時35分にクロヒョウは無事檻に追い詰められて捕獲に成功。
特に被害もなく、なんだかドタバタ劇みたいに終わりました。
戦前のコントみたいで微笑ましい感じもしますね。
戦時殺処分に影響も
ところで、皆さんは「かわいそうなゾウ」という話を覚えているでしょうか?
戦時中、動物園の動物を殺処分するために餌を与えなかった。ゾウは餌をもらうために空腹に耐えて一生懸命芸をするが……という涙チョチョ切れる(言い方古いな)実話です。
この殺処分の決定に、クロヒョウ脱走事件が影響したといわれています。
空爆などで檻が破壊され、猛獣が町に逃げれば不必要なパニックが起こる。
クロヒョウの経験があったので、職員たちも泣く泣く殺処分に納得したといいます。
まあ、一日で終わったことで何より。
でも、次に紹介する「神野寺トラ脱走事件」は夏休みを襲った大脱走でした。
1ヶ月間の恐怖‼神野寺トラ脱走事件
1979年(昭和54年)の8月。
千葉県君津市の神野寺(じんやじ)で飼われていたトラが3頭脱走しました。
「お寺のトラ?」
なんともミスマッチですが、住職がトラを飼っていて、副業で見世物にしていたのです。
当時は誰でも自由に猛獣が飼えたんです
神野寺にいたトラはなんと12頭‼
8月2日の夜、そのうちの3頭がいなくなっていたのです。
1頭はすぐ見つかり檻に戻されましたが、2頭がどこにいったかわからない。
ほぼ1ヶ月に渡る、トラ騒動の始まりです。
ヤバイい!一頭のトラが行方不明!?
2頭はまだ子トラでしたが、体長1.5mで体重100kg。
近隣住民は固く戸締りし、警察、消防、ハンターら500人が駆り出されます。
2日後の8月4日早朝、飼い犬が激しく吠えるのを不審に思った住民が家の近くでトラを目撃。
山中を捜索中にこのトラを発見し、射殺されます。
「トラがかわいそうだ」と抗議が殺到するも、麻酔銃はドラマで見るように撃たれてすぐバタンキューになるものではないので、被害を出さないために射殺はやむを得なかったのです。
抗議の電話がひっきりなしに鳴り、結果的に捜索を妨害することにもなった。
しかし、もう1頭の行方がつかめません。
3000人体制の捜索までして見つからず、11日には捜索の断念まで発表されます。
その間、トラは神野寺のある山中から、麓の住宅地まで移動していたことも知らずに……。
愛犬が食われた!人間への被害は?
8月28日。
住宅街で飼われていた犬が、トラの餌食になりました。
残されていたのは首輪と鎖、そしてトラの大きな足跡。
「犬を襲った。次は人間が襲われる!」
もう抗議に落ち込んではいられない事態です。
射撃スキルの高い選抜隊が組織され、徹底的なトラ狩りが行われます。
そして、ついにトラを発見。
射殺され、8月いっぱい住民を恐怖に陥れた「神野寺トラ脱走事件」は終わります。
神野寺の住職が罪に問われたのはいうまでもありません。
しかもこの住職、1頭目のトラが射殺されたときに立場もわきまえずそれに抗議し、捜索隊を激怒させていたことも公表され、日本中から「バカ野郎」と叩かれたのでした。
以後、日本では猛獣の飼育に規制がかけられることになります。
日本でトラが3頭も逃げたら、そりゃ大パニックだったでしょう。
でも、アメリカにもなると猛獣脱走のスケールも違うようです。
住民騒然!オハイオ州猛獣脱走事件
アメリカ・オハイオ州の小さな町ゼインズヴィルの警察に一報が入ったのは、2011年10月18日の夕方でした。
「クマがいる!」
まあ、クマくらいなら僕の暮らす北海道でも時々ある。
しかし、その後「ライオンがいるんだ!」「家の前にトラが!」「オオカミが!」……次々と飛び込むSOS。
もう、ただごとじゃありません。
なにが起こっているのかわからない。
でも、町の人たちはある人物が関わっていることには見当がついていました。
テリー・トンプソンという男。
トンプソンは「マスキンガム郡アニマルファーム」という個人動物園みたいなものを営み、たくさんの猛獣を飼育していて有名だったのです。
警官がトンプソン宅を訪れると、彼は遺体となっていました。
どうやら妻の浮気に切れて、動物を開放して自分は自殺したらしいのです。
逃がした動物はベンガルトラ、ライオン、ピューマ、ツキノワグマ、ハイイログマ、オオカミ、ヒョウ、ヒヒなど合わせて56匹‼
それらがゼインズヴィルの町に散らばったのですから、怖ろしい話ですよ。
恐怖の一夜!すべて射殺で終わる
それにしても、個人でそんなに猛獣を飼っていいものなのでしょうか?
当時のオハイオ州には猛獣飼育を取り締まる法律はなかったのです。
猛獣飼育が禁止されている州もあるんですが
さて、警官は動物園の協力を得て、猛獣たちの捕獲を開始。
しかし、数が多い。
さらに時間は夜に向かい、暗くなれば捕獲は困難を極めるでしょう。
麻酔銃は数が足りず、前項でも書いたように撃ってから効果が出るのに時間がかかる。
「猛獣は見つけ次第射殺」
この決断は後日、アメリカ中から批難の的となりますが、この状況では正しかったと僕は思う。
結局、48匹が射殺され、サル1匹が行方不明になっただけで、残りは捕獲され、特に被害はありませんでした。
大きな脱走劇だったわりには、一晩で片づいたのも不幸中の幸いですね。
事件の真相は闇の中
この「オハイオ州猛獣脱走事件」は、実は真相がわかっていません。
過激な動物愛護者がトンプソンを殺害し、動物を逃がしたのではないかともいわれているのです。
そういえば、アメリカの映画や小説には「動物園を襲撃して動物を開放する」というストーリーがけっこうあるような気がします。
この事件後にも、オハイオ州では猛獣飼育の法が見直されました。
紹介した3つの事件は社会的にも影響が大きく、スルーできなかったのでしょう。
もちろん猛獣は危険ですが、猛獣脱走事件は人災の面も否定できません。
野生の動物を閉じ込めるという行為そのものが、人間の高慢なのかもしれませんね。
まとめ
3つの猛獣が脱走した事件、いかがでしたか?
とても興味をそそられる事件ですが、その時その場所にいた人間にとっては恐怖の時間だったでしょう。
調べてみると、動物の脱走事件はいくらでも見つかります。
中には「これヤバいでしょ」っていう凶暴な獣もいてビックリしますよ。
猛獣が脱走した場合、どうしても射殺せざるを得ないことになりがちです。
動物が悪いわけでもないんですが、人間を守るためには仕方ない手段といえます。
だからこそ、飼い主には責任を持ってもらいたいものです。
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